認知症が進んだ父親の代わりに銀行へ預金の払い出しにいったところ、「お父さんが認知症で判断能力が衰えていらっしゃるなら家庭裁判所で成年後見人を選任してください」と言われたことがありませんか?
また父親が死亡し、遺産の分割協議をしようと思ったところ母親が認知症になっており、法律専門家や金融機関から「お母さんの代わりに家庭裁判所で成年後見人を選任してその後見人と遺産の分割協議をしてください」と言われたことはありませんか?
判断能力・成年後見人・家庭裁判所といわれても聞き慣れない言葉で何のことかわからないのも当然かもしれません。
当事務所のホームページではわかりやくその制度の説明をさせていただき、身内の方やご自身がご高齢になり何らかの法的な援助が必要なときにお役立ていただければ幸いです。
成年後見とは、
ご自分で判断する能力が不十分な人々を保護する目的で平成12年から現在の成年後見制度がスタートしました。この制度には高齢社会に対応したり、知的障害者・精神障害者の福祉を充実させるために、新しい考え方が導入されました。
■自己決定の尊重―ご本人がご自分で判断して決めることを尊重することです。この自己決定の尊重には将来に備えるという意味もあります。今日は十分な能力があっても明日はわかりません。そのときのために今から備えておく任意後見制度はこの考え方を最も表している制度です。
■残存(現有)能力の活用―ご本人が残された能力を最大限つかって生活をすることです。後見類型の中で保佐・補助はこの考え方がベースになっています。
■ノーマライゼーション-認知症や障害者だからといって特別扱いをしないで今までと同じような生活をしていこうとする考え方です。障害のある人も家庭・地域で通常の生活をすることができるような社会をつくろうとする理念に基づいています。後見人等はその部分を補って支援したらそれが実現できるのかを考えて支援します。
■身上配慮義務-その人の生活を支えることが後見人等の役割とする考え方です。どういう医療を受けたらいいのか、そういう介護・福祉サービスを受けたらいいのか、そのためには財産をどのように使ったらいいのか後見人等が決定します。
ご本人のおかれた状況や判断能力の程度によって様々な制度が構築されています。
成年後見人等の手続きの流れを説明していきます。申立から審判(裁判所が後見人等を決定すること等)までの期間は事案にもよりますが、おおよそ3ヶ月から6ヶ月くらいです。
1. 成年後見業務を取り扱っている司法書士事務所等にご相談ください
本人の判断能力が不十分になってきて、物を買ったり・お金を支払ったり・契約をしたりすることが心配になってきたとき、まずは成年後見業務を取り扱っている司法書士事務所等にご相談ください。
当事務所がご相談をお受けさせていただく場合には、まずはご家族の方からご本人の状況をお聞かせいただきます。
2.ご家族や支援者(ケアマネージャー・ヘルパー等)の立会のもとご本人と面談させていただきます
この段階で法定後見等の申立が必要かどうかの判断がある程度できると思います。
3.医師の診断
主治医等かかりつけの医師に相談して、後見等を判断をする診断書の作成を依頼してください。
4.司法書士が申立書類の作成を行っていきます
法定後見等の申立が必要と判断された場合には、支援の内容(後見相当・保佐相当・補助相当等)について関係者と協議を重ね、方向性が決まったらご家族の方に申立人になっていただき、司法書士が申立書類の作成を行っていきます。必要書類には、ご本人の身分に関する資料・保有財産に関する資料等様々な資料が必要になります。
申立書類が完成したら、申立に要する費用等を用意して家庭裁判所に申立を行います。
5.家庭裁判所は書類調査を行った後、申立人・本人・後見等の候補者に対して出頭要請を行います
出頭した申立人等は家庭裁判所の調査官から事情聴取を受けます。本人が病気等で出頭できないときは裁判所の調査官が施設まで来てくれます。
裁判所の調査の結果、当初提出した医師等の診断書では判断能力の判定ができない場合には、本人の精神状況について医師等に鑑定を依頼します。
6.後見人等の選任の審判
裁判所は事実調査や精神鑑定を経て成年後見制度の利用について適格であると判断すれば、後見等の開始並びに後見人等の選任の審判をします。
7.手続の完了
裁判所から法務局に対して後見開始並びに後見人等の選任登記がなされ、登記が完了しますと登記事項証明書の交付を受けることができます。
これで申立等の手続きは完了し、ここから後見人等の業務が始まることになります。