相続の流れ不動産と預金等についての処理の流れを説明します
人の死亡によって相続が発生します。死亡した人の財産に属した一切の権利義務を相続人が承継します。不動産や預金等のプラスの財産のみならず、借金や誰かに対する義務などのマイナスの財産も承継することになります。
遺言書の存在を相続人に知らされていない場合には、遺言書の存否を確認調査する必要があります。
遺言書はおおまかに2種類のものがあります。一つは公正証書遺言です。公証人と二人の証人のもとで遺言書の作成をおこなうものであり、信用性が高いものと評価されています。これをこのまま使用して名義変更に使用することができます。
もう一つは自筆証書遺言です。自筆の遺言書はかならず家庭裁判所での検認手続きが必要になります。封がされたものであれば開封せずにそのまま検認手続きを受けてください。検認手続きを行わない遺言書は名義変更等の手続きには使用できません。検認手続きはむずかしい手続きではありませんが、自分でできない場合には司法書士等の専門家に相談してください。
相続人の調査確定には戸籍謄本等の取り寄せが必要になります。まずは被相続人(死亡された方)の誕生から死亡に至るまでの戸籍謄本等が必要になります。これらは作成の時期によって呼び名が異なり「除籍」「改製原戸籍」などと呼ばれるものがあります。初めて窓口に行かれた方は、この呼び名にとまどわれる場合があるようですが、気にせずにおとりください。わからない時は市町の窓口で確認してください。
次ぎに相続人(死亡された方の妻・子供など)である方の戸籍謄本と住民票・印鑑証明書が必要になります。
不動産の場合は権利証・固定資産税の評価証明書等で確認します。実務では固定資産税の評価証明書で確認をとります。権利証はあくまでその不動産を取得したときの情報しかなく、かなり古いものが想定されます。不動産がすでに売却されていたり、贈与されたものとか、建物であれば取り壊しているものもあります。最新年度の固定資産税評価証明書をおとりいただければ漏れがありません。
預金の場合には通帳で確認しますが、もし通帳が紛失している場合もしくは生前に取引の銀行があったことを口頭で聞いていた場合には、残高証明書発行の手続きをおとりになることをお勧めします。借金等の調査は被相続人名義の郵便物等に請求書や督促状等がないかを確認するか、通帳等に返済等の事実があれば返済先に連絡をいれて確認することができます。ただし実際には消滅時効にかかっている借金や、過払い金等が発生している借金などもありますので、司法書士等の専門家に相談されたほうがよいと思われます。
借金等マイナスの財産がプラスの財産を超える場合で、相続人が借金の返済を希望しない場合には相続放棄を検討してください。相続放棄は家庭裁判所への申立によっておこなうもので申立書類は裁判所にあります。申立書類の附属書類に事例説明書もはいっていますから、ご自分でも十分申立ができます。
もしご自分でできなければ司法書士等の専門家に依頼することもできます。
遺言書がない場合には、相続人間で相続財産の分割について協議します。一人の相続人がすべての相続財産を取得する場合もあれば、相続人全員に遺産を分け合う場合もあり、様々な事情を考慮して決定されています。
協議が決定したら、遺産分割協議書を作成します。これは名義変更等の手続きに使用するためと、協議が成立した証として残すためであります。通常は司法書士等の専門家が作成します。署名は自筆でおこなっていただき、捺印は原則実印になります。
預金の相続は、それぞれの金融機関によって申立の書面が異なり、われわれ専門家でも複雑で悩まされることが多いものです。金融機関の窓口できちんと説明を受け、一金融機関ごとに処理をしていくしかありません。
上記書類のほかに司法書士宛ての委任状を作成して、相続(または遺贈)を原因とする所有権移転登記申請を行います。
金融機関所定の申請書類に署名捺印を行い窓口に申請します。金融機関によっては相続預金だけを取り扱う部署があり、終了まで日数がかなりかかるところもあります。
ご用意いただく必要準備書類
- 亡くなった方の誕生から死亡にいたるまでの戸籍謄本
※(謄本等の名称は、それぞれ「戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍」などと呼ばれますが、これは作成の時期によって呼び方が異なるもので、特に気にする必要はありません。) - 相続人になられた方の1.戸籍謄本…1通
2.住民票(本籍記載付きのもの)…1通
3.印鑑証明書…1通 - 亡くなった方所有の固定資産評価証明書(所有物件全部)…1通
なお上記(印鑑証明書除く)の書類は司法書士でも取得が可能です。
司法書士で準備するもの
- 遺産分割協議書(または相続分譲渡証書)
- 登記の委任状
- その他(不足戸籍・課税証明等)
相続放棄のご相談
当事務所では,負債などのマイナスの遺産を相続された方に、家庭裁判所に提出する相続放棄申述書を作成し、プラスの遺産もマイナスの遺産も相続しない相続放棄の手続きをお手伝いいたします。
ご家族が不幸にも亡くなり,相続が始まると、被相続人(亡くなった方)の遺産がそのまま相続人に引き継がれます。
遺産相続は、プラスの財産だけではなく、マイナスの財産(借金・保証債務など)も相続人に引き継がれてしまうため、マイナスの財産のほうが多い場合などは、家庭裁判所に相続を放棄する旨を申述して、相続を放棄することができます。
ご用意いただく必要準備書類
- 被相続人(亡くなった方)が死亡したことがわかる戸籍・除籍謄本戸籍をおいた市区町村役場で取得できます。
- 被相続人の住民票除票被相続人が亡くなった時の住所地の市区町村役場で取得できます。
- 相続放棄される方の現在の戸籍謄本各相続人の戸籍をおいている市区町村役場で取得できます。
- 負債等の内容がわかる資料債権者からの請求書・通知書、負債内容がわかる契約書・資料等をご用意ください。
生前贈与の登記に関するご相談
生前贈与は、相続前に自己の財産を他人に贈与することをいい、相続争いの防止や、相続税対策に非常に有効な方法の一つです。
当事務所は、不動産を生前贈与する際に必要な登記申請手続きをサポートいたします。
不幸にもご家族が亡くなった場合、相続が始まります。
相続が始まると、亡くなった方(被相続人)の権利(遺産など)が相続人に引き継がれますが、遺言でもない限り、その遺産をめぐって相続人間で争いが起こったり、また遺産の価額によっては、多額の相続税がかかることもあります。
相続前に自己の財産を贈与することで、相続後に誰が遺産を引き継ぐかという相続争いを防止することや、遺産全体の価額を下げて、相続税対策をすることが可能になります。
※相続税対策のために生前贈与を行うときは、念のため事前に税理士もしくは税務署に確認してください。
ご用意いただく必要準備書類
- 登記済権利証または登記識別情報・登記済権利証とは通常登記申請書や売渡証書等に「登記済」という朱色のスタンプがおされているもので、その横に登記申請の「受付年月日」と「受付番号」が記載されたものです。
・登記識別情報とは登記済権利証に代わるもので、不動産登記法の改正により10年ほど前から施行されているものです。作成は法務局が行い、A4の書面に12桁の記号番号が付されています。この記号番号は所有権等の証拠になるものでシールが貼られています。 - 贈与される方の印鑑証明書発効日から3月以内のものをご用意ください。
- 贈与を受けられる方の住民票の写し現在のご住所が記載されている住民票をご用意ください。
- 印鑑贈与される方(贈与者)についてはご実印、贈与を受けられる方(受贈者)は認印でも結構です。
- 固定資産評価証明書最新年度のものをご用意ください。贈与する不動産(土地・建物)がある市区町村役場で取得することができます。
遺言に関するご相談
最近は遺言をされる方が多くなりました。
遺言書がなかった場合には死亡された方の相続財産をどのように配分するかを相続人全員で協議しなければならず、一つのパイを分けることは相続人それぞれの人生感や財産に対する考えが異なるため、至難の業であります。
もちろん相続人間に争いがなく、すんなりと協議が成立し、相続財産を分配するケースもありますが、昨今は相続人の権利意識が強くなり、簡単には進まないケースが多くなりました。
遺言は将来自分が死亡したときに誰に・どの財産を・どのように与えたいかを意思表明するものです。遺言によってたくさんの財産をもらう方・少ない財産しかもらえない方、様々ではありますが、ある意味なくなった方のご意思がそこに表れているわけですから、相続人も納得せざる終えない部分があるのではないかと思います。
遺言書には財産のことだけではなく、家族への感謝の気持ちや将来への願いなども書くことができます。これらは原則として法律的な効力はありませんが、その思いは家族に伝わります。当事務所でも過去このような遺言書に接したことがあります。家族等にお世話になったお礼やお子さんやお孫さんに対する励まし等が書き綴られてあり、相続人とともに思わずもらい泣きをしたことがありました。
そして大切なことですが、お元気なうちに遺言を行っていただくということです、当事務所でも子供さんなどから親の遺言の相談を受け、ご自宅にお邪魔して面談をしたらすでに認知症になっており、遺言ができないというケースがたびたびあります。
遺言をしようと思ったときが、自分に判断能力がある時です。できるだけ早めにされることをおすすめします。また遺言は何回でもできますので、過去に遺言をしたけれどもやはり変更をしたいということであれば、再度遺言をすればよろしいわけです。新しい遺言が優先します。
遺言が必要な主なケース
- 土地建物等不動産が相続財産のとき複数の相続人によって不動産を分割されてしまっては都合が悪い場合があります。当事務所の経験上相続人間の共有名義はあまりおすすめできません。後々所有権が分散し問題が起こるケースを多く経験しております。
- 夫婦間に子供がいないとき現行民法では、夫婦間で子供がいない場合に夫が死亡したら相続人はその妻と夫の兄弟になります。妻と夫の兄弟は最近ではなかなか交流がなく、夫婦共に住んだ家でも夫の名義であれば、夫の兄弟の承諾がなければ妻の名義にできません。
- 相続権のない人に遺産を渡したいとき息子の嫁や内縁の妻など相続人でないにもかかわらず世話をしてくれたお礼として財産を与えたい場合や孫や団体に財産を渡したい場合などです。
- 相続人中行方不明者がいる場合相続人中行方不明者がいる場合には、相続財産の分割協議ができません。このような場合には家庭裁判所に不在者の財産管理人の選任申立をおこない。選任された管理人と協議を行うことになります。管理人は通常司法書士か弁護士が選任されます。
- 相続人中判断能力のない方がいる場合行方不明者の場合と同じく認知症や障害により判断能力がない方が相続人におられる場合には相続財産の分割協議ができません。このような場合には家庭裁判所に成年後見人等の選任申立をおこない、選任された成年後見人等と協議を行うことになります。後見人等は通常司法書士か弁護士が選任されます。
遺言の方式
遺言の方式は主に2つの方式があります。一つは自筆証書遺言です。もう一つは公正証書遺言です。
- 自筆証書遺言
- 遺言をしようとする人が、その全文・日付・氏名を自書し、印鑑を押した方式の遺言です。自筆証書遺言の長所は費用がかからないメリットがあります。
ただし内容について矛盾するような表現があり登記申請等ができなかったケースもあり、財産の多い場合や複数の相続人に財産を分けて遺言する場合などは専門家に相談されることをおすすめします。自筆証書遺言は死亡後、相続人が家庭裁判所に持ち込み検認手続きを行う必要があります。
- 公正証書遺言
- 公証人の作成する公正証書によって遺言するものです。
証人2人の立ち会いの下、遺言者が遺言の趣旨を公証人に伝えます。その内容を公証人が筆記し、読み聞かせて、筆記の正確なことを遺言者・証人が承認します。その後に遺言者・証人が署名押印します。ただし実務では遺言書の趣旨(内容)などは事前に打ち合わせを行うことが多いです。
メリットは公証人役場で遺言書原本を保管するので紛失や偽造・変造の心配はありません。最も信頼性のある遺言方式です。
当事務所でも可能な限りこの方式をおすすめしております。
相続登記義務化
- 法改正により2024年より相続登記が義務化
- 今まで相続登記に期限はありませんでしたが、法改正により2024年より相続登記が義務化されます。これまで相続登記に義務はありませんでしたが、相続登記が義務化されてないことにより相続登記をせず長期間放置されて「所有者が判明しない」または「判明しても所有者に連絡がつかない」土地や建物が年々増加してしまいました。相続登記が義務化されると相続不動産の取得を知ってから3年以内に相続登記することが義務化されることになり、正当な理由なく怠れば10万円以下の過料(罰金)が科されることが盛り込まれています。※2022年1月時点の情報です。
2024年に相続登記の義務化が始まる予定ですが、注意をしたいのは義務化がはじまる前に相続が開始した方も2024年の相続登記義務化の対象になりますので、現在すでに相続登記を放置されている方も早めに相続登記を行いましょう。相続登記に必要な戸籍収集をする際に、戸籍を取得する場所が多いと1~2ヶ月かかることがあります。早めに準備されることをオススメします。
- 相続登記せずそのまま放置すると…
- 相続関係が複雑化し、手続きが大変になります
相続登記を放置している間に、さらに相続人にご不幸があった場合には、相続人の数が増えて相続関係が複雑になってしまいます。例えば、不動産を相続人一人の単独所有とする場合は、相続人全員で遺産分割協議をして、相続人全員の了承を得なければなりません。この遺産分割協議は人数が増えるほど、話がまとまりにくく大変な手続きになりやすいです。
不動産の売却が困難になります。
法律上相続権のある方が複数ある場合で、話し合いなどで誰がその不動産の所有者になるのかまだ正式に決まっていない間は、その全員でその不動産を共有していることになりますから、その間は全員が売却に同意しなければ、その不動産を売却することは出来ません。そして、いざというときに、全員で足並みを揃えて急ぎ売却を進めることは極めて困難ですから、売却などの必要が起こる前に、余裕をもって相続登記を済ませておくことが大切です。
他の相続人の債権者も関与してくる可能性があります。
相続登記を放置していると、他の相続人の債権者が法定どおりの相続登記をし、差押さえの登記をしてくるケースがあります。このような場合には、その債権者に差押さえ登記を抹消するよう請求しなければなりません。当事者だけでなく第三者も関与してくる可能性があるので注意が必要です。
相続放棄の申述が受理されると、相続のはじめから相続人でなかったように扱われ、プラスの遺産も、マイナスの遺産も引き継ぐことはありません。ただし、相続放棄の申述が受理されても戸籍等に記載されるわけではないため、相続放棄後は、裁判所から通知される相続放棄申述受理通知書または相続放棄申述受理証明書を取得して、負債を請求する債権者には、相続放棄したことを証明しましょう。